マンションの大規模修繕をしないリスクとは?
2026.02.09
マンションは定期的な大規模修繕が必要とされています。
では、マンションの大規模修繕をしないとどうなるのでしょう。
この記事では、そんなマンションの大規模修繕をしないリスクについて解説していきます。
マンションの大規模修繕とは何か
マンションの大規模修繕とは、建物全体または主要な複数の部位に対して計画的に行う修繕工事を指します。
主な目的は、経年劣化や自然環境の影響によって低下した建物の性能や機能を、新築時に近い状態まで回復させることです。
具体的には、外壁塗装や防水工事、共用部の設備更新、給排水管の補修などが代表的な工事内容となります。
国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」では、大規模修繕工事を「建物の全体又は複数の部位について行う大規模な計画修繕工事」と定義しています。
ここで強調されているのは、単なる部分的補修ではなく、建物全体の耐久性や安全性を回復・維持することを目的としている点です。
なお、大規模修繕と似た言葉に「改修工事」があります。
両者には明確な違いがあります。
修繕工事は、劣化した部分を元の性能に戻すことを目的とするのに対し、改修工事は建物の機能向上や設備の更新、バリアフリー化などを目的として行われる工事です。
大規模修繕のタイミングで、必要に応じて改修工事を同時に行うケースも少なくありません。
大規模修繕は法律で義務付けられているのか
結論から言うと、大規模修繕工事そのものは法律で義務化されていません。
「何年ごとに必ず行わなければならない」という法的規定も存在しません。
そのため、建物の築年数や劣化状況に応じて柔軟に計画を立てることが可能です。
ただし、区分所有法や民法上では、管理組合や区分所有者には建物を適切に維持・管理する責任があります。
具体的には、共用部分を安全に維持する義務や、建物を適切な状態で使用できるよう管理する義務です。
このため、建物の劣化が進行しているにもかかわらず、点検や修繕を怠ると、管理上の責任を問われる可能性があります。
また、建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、一定規模の建物に対して外壁打診調査や防水層の確認など、建物の安全性を確認する点検・報告が義務付けられています。
これはあくまで調査や報告の義務であり、大規模修繕そのものを義務化するものではありません。
しかし、調査の結果、危険性が確認された場合には、適切な対応を取ることが安全配慮義務として求められます。
大規模修繕を行わないことで生じるリスク
安全性の低下
大規模修繕を行わず、建物の劣化を放置すると、外壁タイルの浮きや剥落、コンクリートのひび割れなどが進行する可能性が高いです。
これらは外観の問題だけでなく、落下事故や建物構造への悪影響など、安全上の重大リスクを引き起こすことがあります。
定期報告制度や点検は、こうしたリスクを事前に把握するための手段です。
調査で危険性が確認されても適切な修繕を行わなければ、管理組合としての安全配慮義務を果たしていないと判断される可能性があります。
雨漏り・設備不良による二次被害
防水層やシーリング材の劣化を放置すると、雨漏りや漏水が発生しやすいです。
雨漏りは内装材の腐食やカビの発生を招き、居住環境の悪化だけでなく、健康被害を引き起こすこともあります。
また、給排水管や電気設備の不具合が進行すると、漏電や断水など日常生活に支障が出る場合があります。
これらの問題は、初期段階で修繕すれば比較的軽微な工事で済むケースが多く、修繕を先延ばしにするほど、結果として工事費用が増大する傾向があるでしょう。
したがって、計画的な修繕は安全確保とコスト抑制の両方の観点で重要です。
資産価値の低下
マンションの資産価値は、立地や築年数だけで決まるものではありません。
共用部の管理状態や修繕履歴も購入希望者が重視するポイントです。
外観が劣化していたり、修繕計画が不十分であるマンションは、「管理状態が悪い」という印象を与えやすくなります。
その結果、売却時に価格が下がったり、買い手がつきにくくなる可能性があります。
大規模修繕は、価格を上げるための工事ではありませんが、資産価値の維持には不可欠な要素です。
管理責任を問われるリスク
民法第717条では、建物に瑕疵があり第三者に損害を与えた場合、占有者や所有者が損害賠償責任を負う可能性があると規定されています。
ただし、修繕をしていないだけで直ちに賠償責任が発生するわけではありません。
実際には、管理組合が劣化状況を把握していたか、点検や調査を実施していたか、必要な対応を検討していたかなど、具体的な管理状況に基づき判断されます。
それでも、明らかな劣化を長期間放置していた場合、管理不備とみなされるリスクが高まります。
まとめ
建物の安全性、居住環境、資産価値を維持するためには、建物の状態に応じた適切な時期にマンションの大規模修繕を実施することが重要です。
「築何年だからやる」「管理会社に言われたからやる」といった受け身の対応ではなく、調査結果や長期修繕計画をもとに、本当に必要な工事を判断することが求められます。
大規模修繕を行わない場合には、安全性の低下、設備不良による二次被害、資産価値の低下、管理責任を問われるリスクなど、複数の問題が同時に発生する可能性があります。
したがって、計画的に調査・診断を行い、必要な修繕を適切なタイミングで実施することが、マンション管理において最も重要なポイントです。
参考URL大規模修繕工事の定義とは?なぜ必要なのか?費用、大まかな流れまで詳しく解説|株式会社さくら事務所
大規模修繕工事は必要?修繕しないことのリスクや修繕目安時期を解説|ニューサツ

